【第1回】使用目的の確認~CPU選びまでパソコンの自作を実例をもとに紹介
購入したAMD Ryzen 9 5950X

2021/07/14公開 いざパソコンを自作するとき、使用目的を確認、パーツ選び、パーツの購入、パーツの組み立てとなります。ここでは私が実際にどのようにしてパソコンを自作するのかを使用目的の確認から詳しく紹介します。

これからパソコンを自作してみようと思っている方や、パソコンの自作がどのようなものか興味のある方は参考にしていただければ幸いです。

パソコンを自作するときの流れ

はじめて自作したデスクトップパソコン

パソコンを自作するときの流れは人それぞれかもしれませんが、ここでは私が実際にメイン機の更新で行った流れを各STEPのかたちで紹介します。

私がパソコンを自作するときの各STEP
STEP1 使用目的の確認
STEP2 パーツ選び
STEP3 購入
STEP4 組み立て
STEP5 起動確認と環境整備
STEP1では使用目的を確認します。
 パソコンには様々な使用目的がありますが、使用目的によってパソコンに必要な性能や機能が変わってきます。たとえば3Dゲームが使用目的の場合にはGPUに高い性能が求められるため、グラフィックボードを搭載するとともにCPUにもそれなりの性能が求められます。
 またデスクトップパソコンは一般的には有線LANでのインターネット接続ですが、ルーターが無い部屋やLANケーブルが長くなってしまう場合などでは無線LANの使用が必要になってくるかもしれません。ところが低価格帯のマザーボードには無線LANが備わっていない製品も多くあります。まずは使用目的を確認してパソコンに必要な性能や機能をはっきりさせることが重要になります。
STEP2では自作に必要な各パーツを選びます。
 使用目的を確認して分かったパソコンに必要な性能や機能を満たすように、パソコンを構成する各パーツを選んでいきます。私はCPUとGPUを選んだあとに残りのパーツを選んでいきました。
 CPUとGPUはパソコンの性能を決めるための重要なパーツとなります。CPUが決まるとCPUクーラーやマザーボードがしぼられます。GPUも決まれば電源ユニットに必要な出力も決まるとともに、パソコンケースの必要最低限の大きさも決まります。あとは冷却性や静音性を考慮するとともに、必要なストレージの数やUSBポートの数などからパソコンケースを決めることができます。
STEP3では選んだ各パーツの購入となります。
 型番(製品番号)は似ているものもあるため、購入時に間違わないように注意が必要になります。また在庫切れの場合や取り寄せに時間がかかる場合などがあるため、パーツの変更が必要になることもあります。さらに相性問題や初期不良も起こりうるため、どこで購入するのかも重要になります。
STEP4では購入した各パーツの組み立てとなります。
 プラモデルを作る方がよほど難しい(大変)とは思いますが、確かに私もはじめての自作のときには不安がありました。そこで今回の自作でははじめから写真をじっくり撮ることができるので詳しく紹介する予定です。
STEP5ではいよいよ起動確認となり、無事に起動確認が終了したらパソコンを使用するための環境整備となります。
 起動しない場合には原因を自分で探すことになるため、緊張するSTEPとなります。また無事に起動確認が終了してもOSのインストールやアップデート、ソフト(アプリ)のインストールなど実際に使用するまでには意外と時間がかかるSTEPとなります。
現在はSTEP3が終了しました
 かなり苦戦しましたが、文章を書いている今現在はSTEP3の購入が終了しています。
ざっくりと書くとSTEP1とSTEP2が約1日で終了し、STEP3も購入が1日で終了し、商品の到着が6日で終了しています。約1週間でSTEP1~3が終了したことになります。
全てのSTEPを1回で書くとかなり超大作となってしまうために数回に分けてじっくり紹介していくことにします。

STEP1 使用目的を確認する

動画編集には高性能なパソコンが必要になる

パソコンを自作するとき、もしくは購入するときにまずはじめに確認することは、使用目的が何であるかを確認するとともに具体的にすることです。これがSTEP1となります。

詳しくは「失敗しないためのパソコン選びのコツ(内部リンク)」を参考にしていただければと思いますが、パソコンはインターネットの閲覧やOffice製品の使用、写真や動画のパックアップ作成、CADやCAMなどのソフト(アプリ)の使用、3Dゲームや動画編集や動画配信など趣味や仕事で使用する機会が多くありますが、使用目的によりパソコンに求められる性能や機能が変わってきます。

もし使用目的に合っていないパソコンを選んでしまった場合には、快適に使用できないばかりでなく、場合によっては買い替えとなってしまうこともあるでしょう。そこで使用目的に合ったパソコンを選ぶ必要があるのです。

大は小を兼ねるけれども
もしパソコンの使用目的が一般的なものの場合で、かつ予算が充分にある場合には、100~200万円程度のパソコンを購入または自作すればだいたいの使用目的には合うことでしょう。
しかし使用目的が一般的なものであっても大抵は予算に限りがあるはずです。またパソコンには寿命もあります。
そこで使用目的を確認することで必要充分な性能や機能をもったパソコンをそれなりの価格で選ぶことができ、快適にパソコンを使用することにつながっていきます。
私の使用目的を具体的にすると以下のようになりました。
私のパソコンの使用目的
パソコンに高い性能が要求される使用目的
・動画編集
パソコンに中程度の性能が要求される使用目的
・写真や動画のバックアップ作成
・DTM(いつかやってみたいこと)
パソコンにそれほど高くない(低い)性能が要求される使用目的
インターネットの閲覧
・動画の視聴
・Microsoft Office製品の使用

まず使用目的の一番手に動画編集があります。

私が現在使用しているパソコンは8年ほど前に自作したものです。当時ではある程度高い性能をもっていましたが、現在ではいざ動画編集を試したもののまともに動画編集ができない状況です。そこで今回購入するパソコンにはできる限り動画編集を快適に行えることを大前提として考えていきます。

動画編集が快適にできるパソコンであればCPUとGPUはそれぞれ高性能なものが要求されるであろうことから、他の使用目的は必然的に満たすパソコンになると考えます。

次に機能について以下のように考えました。

パソコンに必要な機能
・無線LANとBluetoothに一応対応させる。
・光学ドライブはBDとM-DISC対応とする。
・USBポートは4つ以上必要。
・PCIeは4.0対応とする。
※各機能は現状で最高の規格にできるだけ対応していることとする。
パソコンはデスクトップパソコンとなるため有線LANでの接続を前提としていますが、一応無線LANとBluetoothには対応できるようにします。後付けで対応することも可能ですが、マザーボード(MB)を上位製品とすると勝手に対応します。
次に需要の無くなりつつある光学ドライブは写真や動画のバックアップ作成に使用するため、BDに対応するとともにM-DISCにも対応するものとします。
USBポートはキーボードとマウス用に2つ、USBフラッシュメモリ用に1つ、他に予備として1つの4つ以上あるものとします。実際にはキーボードとマウスは落ち着いたらワイヤレス製品の購入を考えているために2つではなく1つで足りそうで、2つが予備となります。
さらにPCIeは最新の4.0対応のものとするとともに、USBの規格も最新のGen2対応のポートがあるものとします。これはパソコンを長持ちさせるための対応となります。
最新の規格に対応させることでパソコンを長持ちさせる
USBの転送速度の規格には2.0、3.0、3.1、3.2などがあります。最新の規格に対応させておくと、あとあとUSB接続機器を選ぶときに苦労することが少なくなります。
PCIeも最新は4.0、SATA(Serial ATA)は3となります。
※PCIeの規格自体は5.0が最新とのことですが、対応している製品は4.0までが一般的の様です。
STEP1のまとめ
・使用目的のメインは動画編集。
・規格は最新に対応させることでパソコンを長持ちさせる。

STEP2 自作に必要なパーツを選ぶ

今回動画編集を使用目的のメインとしたパソコンを自作することになります。かなり悩んだ末にたどり着いたのが以下の構成になります。

新たに自作するパソコンの構成(予定)
パーツ 型番 価格(万円)
CPU AMD Ryzen 9 5950X 11
GPU MSI GeForce RTX 3080 VENTUS 3X 10G OC 17.4
MB ASUS ROG Crosshair VIII Formula 6.8
メモリ G.Skill TridentZ Neo F4-3800C18D-64GTZN 5.2
ストレージ Samsung SSD 980 PRO MZ-V8P1T0B/IT 4.8
ストレージ Samsung SSD 980 PRO MZ-V8P2T0B/IT 2.5
ストレージ SEAGATE ST8000DM004 BarraCuda-8TB 1.7
電源ユニット ANTEC NE850 Platinum 2
CPUクーラー DEEPCOOL AS500 R-AS500-BKNLMN-G 0.7
PCケース LIAN LI Lancool-215 0.7
BD Pioneer BDR-212JBK 1.5
OS Windows10 Pro DSP 1.6
CPUグリス Thermalright TF4 0.1
合計 56.0

正直なところかなりCPUとGPUは悩みました。特にCPUはいっそのことAMD Ryzen Threadripper 3970Xにしようかとも考えましたが、主に予算の関係で断念しました。

STEP2ではどのようにパーツを選んだのか、個人的な考え方と合わせて詳しく紹介していきます。

CPUはAMD Ryzen 9 5950X

はじめに注目したのはCPUですが、そもそも動画編集を行うパソコンにはどの程度のCPUとGPUの性能が必要なのでしょうか。

現在使用しているパソコンの構成
パーツ 型番など
CPU Core i7-4770K
4C8T 3.5-3.9GHz
GPU NVIDIA GeForce GTX 770
MB ASUS MAXIMUS Ⅵ
メモリ CORSAIR DOMINATOR PLATIUM 8GB × 2
ストレージ Samsung SSD 860 QVO 1TB
ストレージ WDC WD30EZRX 3TB
ストレージ WDC WD30EZRX 3TB
ストレージ WDC WD30EZRX 3TB
電源ユニット ENERMAX Platimax 750W
CPUクーラー CRYORIG R1 Universal
PCケース COOLER MASTER COSMOSⅡ
BD PIONEER BDR-208XJB
OS Windows10 Pro

現在使用しているパソコンで動画編集を行っているときにパソコンがシャットダウンした原因はCPUの性能不足によるものであると考えます。また動画編集中にプレビュー画面が乱れたのは、GPUの性能不足もしくはNVENCに対応していなかったことが考えられます。

私は今まで動画編集ではCPUとGPU両方の性能を求められると思っていました。またCPUはGPUのボトルネック(足かせ)にならない程度の性能があれば良く、どちらかと言うとGPUの性能が大きく求められるため、GPUに予算を割く方が良いと思っていました。動画編集だけではなく動画配信をする場合にはCPUの性能が必要になるため、合わせてCPUの性能を上げる必要があるとも思っていました。
本当のところどうなのか、ネットでそれぞれの見解をみることにしました。
動画編集におけるCPUとGPUの重要性について
・GPUは無くても大丈夫。
・GPUは重要。
・CPUが重要。
・内蔵GPUが必要。
・CPUのシングルコアのクロックが重要。
調べ方にもよるとは思いますが、さまざまな意見がありました。よく分からないまま少し考えていきます。
基本に立ち返って考えてみれば、CPUやGPUと言ったいわゆるハードと動画編集に使用するソフト(アプリ)はハード側の性能が良くてもそれを生かすソフトでなければ意味を成しません。私が使用する予定のソフトはPowerDirectorですが、動画編集ソフトは色々とあります。
つまり、ソフトによって若干CPUやGPUに求められる性能が変わってくることが想定されるし、動画編集に使用するソフトを特に決めていないのであれば(変わる可能性があるのであれば)少なくともGPUの性能はある程度あった方が快適になる可能性は高くなります。
またCPUはエンコードなど動画編集で必ず行う作業を担っていることは間違いないため一定以上の性能が求められることになり、Ryzen Threadripperでも動画編集で快適に作業できるとの意見もあることからどちらかと言うとGPUよりもCPUに予算を割いた方が良いと言う結論に至りました。
内蔵GPUが必要と言う意見についてはIntelでもAMDでもGPUを内蔵していない高性能なCPUが発売されていることから、動画編集ソフトの開発において内蔵GPUを前提とするのはおかしな方向であり、一部のソフトについては内蔵GPUが生きる場合があるとだけ注意すれば良いと個人的に意見をまとめました。
これでやっとCPU選びに入ることになります。

先日知人(パソコンの大先輩)がAMD Ryzen Threadripperでパソコンを組んだと言っていました。一番上ではないと言っていたのでおそらく3970Xだと思います。かなり魅力的なCPUです。

現状CPUを選ぶときにプロセスルールが7nmになったAMDを考慮することになります。

Intel Core i9のPassMarkスコアと価格
CPU PassMark 価格 TDP
Core i9-11900K 25,663 ¥71,980 125W
8C16T 3.5-5.3GHz
Core i9-11900KF 25,039 ¥65,996 125W
8C16T 3.5-5.3GHz
Core i9-11900F 23,862 ¥48,950 65W
8C16T 2.5-5.2GHz
Core i9-11900 23,166 ¥51,888 65W
8C16T 2.5-5.2GHz

 

AMD RyzenのPassMarkスコアと価格
CPU PassMark 価格 TDP
Ryzen 9 5950X 46,161 ¥97,980 105W
16C32T 3.4-4.9GHz
Ryzen 9 5900X 39,529 ¥69,979 105W
12C24T 3.7-4.8GHz
Ryzen 9 5900 35,586 N/A 65W
12C24T 3.0-4.7GHz
Ryzen 7 5800X 28,549 ¥51,480 105W
8C16T 3.8-4.7GHz
Ryzen 7 5800 26,141 N/A 65W
8C16T 3.4-4.6GHz
Ryzen 5 5600X 22,172 ¥36,480 65W
6C12T 3.7-4.6GHz

 

AMD Ryzen ThreadripperのPassMarkスコアと価格
CPU PassMark 価格 TDP
Ryzen Tr PRO 3995WX 86,249 ¥651,806 280W
64C128T 2.7-4.2GHz
Ryzen Tr 3990X 81,290 ¥527,999 280W
64C128T 2.9-4.3GHz
Ryzen Tr PRO 3975WX 62,718 ¥327,899 280W
32C64T 3.5-4.2GHz
Ryzen Tr 3970X 64,173 ¥244,980 280W
32C64T 3.7-4.5GHz
Ryzen Tr 3960X 55,057 ¥169,980 280W
24C48T 3.8-4.5GHz
Ryzen Tr PRO 3955WX 40,251 ¥149,599 280W
16C32T 3.9-4.3GHz
Ryzen Tr 2950X 30,901 N/A 180W
16C32T 3.5-4.4GHz

※TrはThreadripperの略です。※PassMarkスコアはPassMark SOFT WARECPU Benchmarksを参照。※価格は価格.comを参照。※2021.07.08時点。

使用目的が3DゲームメインであればIntelのCore i9-11900Kも充分に候補となりますが、今回は動画編集がメインであるためPassMarkスコアの高いものの中から選ぼうと思いました。

Ryzen Threadripper PRO 3995WXはPassMarkスコアが高いですが価格もさることながら使用目的が少し異なってくるため、私にとっては適切ではありません。Ryzen Threadripper 3990Xは興味深い性能ではあるものの価格も高く、かつ128スレッドのCPUは現状では私にとって不要です。※現在Windows OSでサポートされている論理コア数は256とのことです。

そうなってくると気になるのがRyzen Threadripper 3970Xです。価格が約25万円と高いものの32C64Tとちょうど良いコア数とスレッド数です。TDPが280Wと高いですが設定を変えない限りは280Wを最大として動くようなので、簡易水冷を用いればなんとか冷却もできそうです。そこでざっくりと価格のシミュレーションをしてみました。

Ryzen Threadripper 3970Xが25万円として、GPUはNVIDIA RTX 3090が30万円、Ryzen Threadripperはメモリが2枚ではなく8枚必要になってくるようなので単純に約30万円ほど予算が上がることになります。もともと前回の自作では35万円ほどだったと記憶していて、今回の予算は前回と同額か少し多くなる程度を想定していました。ところがざっくりと計算しても70万円を超える予算となってしまいます。

悲しいけれども予算には限りがある
もともとグラフィックボードの価格が落ち着くのが来年以降と考えていて、それに合わせて購入資金を貯めている最中でした。ところが5月過ぎから価格が下降傾向となり、購入した7月の段階ではある程度購入できる価格まで落ち着きました。
2021年6月にMicrosoftからWindows11の発表もあり、動画編集を行いたい私にとってはパソコンの買い替えを早く行いたい状況でもありました。「私にとってのパソコン購入のタイミングは今だ。」との思いで今回のパソコン購入となりました。
一応予算的にはぎりぎり70万円を超えてもなんとかなりそうでしたが、ここでの無理な出費は後にひびくためRyzen Threadripper 3970Xを断念しました。
かなり悩みましたがもともとCPUはCore i7-4770Kであり、動画編集もこれから学んでいくためにAMDのRyzen 9 5950Xとすることにしました。価格も約11万円と決して安くはありませんが、TDPが105Wと扱いやすくPassMarkスコアも46,161あるため贅沢な悩みであったと少し反省もしました。動画編集が充分にできるようになって次のパソコン更新時はさらに上のCPUを夢見て仕事やプライベートに頑張ろうと思った次第です。

STEP1からCPU選びまでのまとめ

STEP1の使用目的の確認で動画編集がメインであることを確認し、STEP2の自作に必要なパーツ選びでは悩んだ末にCPUをAMDのRyzen 9 5950Xとすることにしました。
次回の第2回はCPUとともに重要なパーツとなるGPU選びから紹介します。
あなたのパソコン選びの参考になれば幸いです。
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