がんには標準治療が最良の治療です
医療 画像は「いらすとや」

2021/01/30更新 わたしの母は10年ほど前にがんと診断され、その後治療していたものの亡くなりました。

がんは告知を受けた本人はもちろんのこと、家族も精神的にも金銭的にも大変です。しかし、制度を利用することで金銭的な負担を減らすことができますし、精神的な負担も相談窓口などで対応してもらうこともできます。

ここではがんの標準治療や利用できる制度などについて経験をもとに紹介します。

がんは身近な病気です

がんは特殊な病気ではありません。

わたしも母ががんであることの説明を受けたとき、頭の中が真っ白になりました。そのときは『なぜ母が特殊な病気にかからなくてはならないのか』との思いでした。
母も同様に『どうして私ががんにならなければならないのか』と半ばわめくように言っていたことを覚えています。

しかし国立がん研究センターによると、2人に1人は何らかのがんにかかると言われているそうです。

がんについて
現在日本人は、一生のうちに、2人に1人は何らかのがんにかかるといわれています。がんは、すべての人にとって身近な病気です。

またがんには「主要5部位」とも呼ばれる現時点での一般的な「主要部位」があります。
主要部位(主要5部位)
・胃
・大腸(結腸と直腸)
・肝
・肺
・乳房
またがんはステージと呼ぶ分類があります。
TNM分類では0期に近いほどがんが小さくとどまっている状態で、Ⅳ機に近いほどがんが広がっている状態(進行がん)とのことです。

ステージ(=病気)
病期分類ともいい、癌の大きさや他の臓器への広がり方で癌を分類し、がんの進行の程度を判定するための基準。がんの治療法を選ぶために判定したり、5年生存率を出すときの区分として用いたりします。

また「生存率」と呼ぶ確率があります。
診断から一定期間後に生存している確率とのことで、5年生存率がよく用いられるそうです。
医者からの説明では
わたしが母を診察した医者からは
・大腸がん
・ステージはⅢb
・5年生存率は60%で手術をすれば70%になる
と言ったように説明を受けました。
わたしも調べるまでは分かりませんでしたが、がんは特殊な病気ではなく身近な病気です。
正しい知識を得て、何を行えば良いのか考える必要があります。

標準治療が最良の治療

がんには標準治療と言うものがあります。

国立がん研究センターのがん情報サービスの用語集に標準治療についての記載があります。

標準治療
標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。

記載には『現在利用できる最良の治療であることが示され』とあります。
わたしも母ががんと診断されてから個人的に書籍などを購入して最先端の治療や食べ物などの情報を得ました。生存率を上げるための方法を探ろうとしたからです。
標準治療の記載には続きがあります。

標準治療(続き)
一方、推奨される治療という意味ではなく、一般的に広く行われている治療という意味で「標準治療」という言葉が使われることもあるので、どちらの意味で使われているか注意する必要があります。なお、医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。

続きには『なお、医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。』とあり、『最先端の治療は、(中略)それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。』とあります。
つまり標準治療とは時代により変わる可能性があるが、科学的根拠に基づいた現在利用できる最良の治療のことだと言っています。

わたしの母はがんの標準治療を知らなかったのか、もしくはわたしに金銭的な負担を掛けたくなかったのかは分かりませんが、がんと診断されて手術後に行っていたのは飲み薬を飲んでいたことです。

半年後に別の病院でがんの再発が確認されてがんの拠点病院にかかることになり、はじめて化学療法の話が聞けました。そしてやっと標準治療について確認することができました。

少なくともがんの標準治療については「日本独自」ではなく、「世界の標準的な治療」のことを言います。

国内未承認薬とドラッグ・ラグについて
標準治療で使用する薬が必ずしも国内で承認されている訳ではありません。このいわゆる国内未承認薬はしばらくすると承認されるようになるのが一般的とは思いますが、このタイム・ラグをドラッグ・ラグと呼んでいるそうです。
また、わたしが経験したのは国内で承認されてもすぐに病院で使用できるかは別の話らしく、ある抗がん剤が国内で承認されましたが母に投与できたのは少し経ってからでした。確認したところ、病院内で使用が認められてからの投与となったとのことでした。
がんの標準治療について知りたい方は(外部リンク)
またがんには拠点病院と呼ばれている病院があります。
厚生労働省のホームページがん診療連携拠点病院等として記載があります。

全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国にがん診療連携拠点病院を402箇所(都道府県がん診療連携拠点病院51箇所、地域がん診療連携拠点病院(高度型)47箇所、地域がん診療連携拠点病院275箇所、地域がん診療連携拠点病院(特例型)26箇所、特定領域がん診療連携拠点病院1箇所、国立がん研究センター1箇所)、地域がん診療病院を45箇所、指定しています(令和2年4月1日現在)。

冒頭に『全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう』とあります。これは平成18年に施行された「がん対策基本法」の基本施策にある「がん医療の均てん化の促進」を受けた取り組みのひとつとだと思います。
この拠点病院の指定を受けるには、診療体制や手術療法の提供体制、放射線治療の提供体制、薬物療法の提供体制、緩和ケアの提供体制などについて要件を満たしているかが問われるようです。
よって、がん医療を受けるときには指定された拠点病院等であれば最良の治療(標準治療)を受けられることになります。
※下の参考(外部リンク)で拠点病院等を探すことができます。

医療費はどのくらい

医療費は受ける医療により異なります。
わたしの母の場合は、1回の抗がん剤投与で11~12万円でした。
2週間に1回の投与だったので最大で月3回の投与となり多い月で30万円を超えましたが、この医療費は使用する抗がん剤や投与する量などによって変わります。
母の医療費
・抗がん剤投与1回で11~12万円。(薬や栄養剤込み)
・2週間に1回の投与で最大月3回の投与となり、30万円を超えたこともある。
※平均すると月に23万円程度となりました。
※高額療養費制度を利用していたため、窓口で支払った自己負担上限額を超えた額については後から支給されました。
抗がん剤の副作用もあり、痛み止めの他に食事も量が減ることから栄養剤なども処方されました。
医療費は確かにかかりますが後述する制度を利用すれば月に窓口で支払う費用は自己負担上限額が適用されるため、わたしの母の場合に当てはめて計算すると月6万円程度でした。
がんなどの医療費が高くなる場合に利用できる制度があります。それが高額療養費制度限度額適用認定です。
高額療養費制度とは、入院や外来診療など窓口で支払う自己負担額が一定額を超えた場合に超えた金額があとから支給される(戻ってくる)制度です。
また限度額認定とは、交付された限度額適用認定証を窓口で提示することにより同一医療機関のひと月の支払額が自己負担限度額までとなります。
平成24年から外来診療でも限度額適用認定証が利用できるようになったため、医療費の負担はかなり軽減されました。
高額療養費制度と限度額認定についてまとめました(内部リンク)
わたしは他にも市の高額療養費貸付制度を利用しましたが、自治体により利用できる制度があるかもしれません。
高額療養費貸付制度
わたしが利用したのは市の高額療養費貸付制度です。
当時まだ外来診療で限度額適用認定証が使用できなかったため、窓口での支払いは請求通りでした。自己負担上限額を超えた額は後で支給されますが、月によっては支給が少ないのに支払いが多くなる時があります。
そこで市が病院に医療費を翌月にまとめて支払う制度を利用することにより、わたしは自己負担上限額分を市に支払うだけで窓口での支払いが免除される制度でした。

最後に

母の闘病中には何度か家族旅行に行きました。近隣の県へ車で行き温泉に入ることなどが主でしたが、年に1回は海外旅行にも行きました。抗がん剤投与を続けてもらうためでした。

海外には飛行機を利用して行きましたが、面倒なこともありました。通常気圧の変化がある飛行機に乗ることは厳しい様です。

闘病中に飛行機に乗ること
家族に看護師がいたため医者も海外旅行に行くことは許可してくれましたが、一般的には許可されないかもしれません。
特に飛行機は気圧の変化があり、母はよく飛行機に乗っていたため不安も無かったのですが、慣れていないと体調を悪くするかもしれません。
必ず医者に相談することをおすすめします。

また痛み止めに医療用麻薬を使用していたため、海外へ行く場合には事前に手続きなどが必要になります。

医療用麻薬を服用中に海外旅行を検討する場合は確認が必要です(外部リンク)

この様にあまり無い例かもしれませんが、医療用麻薬を携帯して海外へ行く場合には、厚生労働省の記載にあるように事前に相手国にも確認が必要になるとのことなので注意してください。

母は闘病むなしく亡くなりましたが、最後は穏やかな顔をしていました。今では残った家族と笑いながら思い出話をします。

病院によっては家族へのケアも行っています。辛いときには無理をせず話を聞いてもらえば良いと思います。

またがんへの備えについて、母は2つの生命保険に入っていたため最終的には保険金が出ましたが必要なタイミングで出るかどうかは契約によると思います。

保険の見直し時期などに病気のことや保険について家族で考えてみると良いと思います。

厚生労働省のがん対策情報(外部リンク)
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